鼻の主な病気
副鼻腔炎(ふくびくうえん)
鼻の周囲の骨(顔面骨)の中には、いくつかの空洞の部分があり、鼻の内部(鼻腔といいます)とそれぞれ小さな穴を通してつながっています。それらは総称して「副鼻腔」と呼ばれています。この副鼻腔に細菌やカビ(真菌)などが感染して炎症が起こった状態が副鼻腔炎で、急性と慢性の2種類があります。
急性副鼻腔炎では、「粘っこい(粘液性)あるいは色のついた(膿性)鼻汁」、「鼻づまり(鼻閉)」、「鼻汁がのどへ流れ込む(後鼻漏)」などの鼻症状とともに、「ほお(頬部)やひたい(前額部)の痛み」、「頭痛」や「発熱」などの症状が起こることもあります。治療としては、粘膜収縮剤などで鼻を処置して鼻汁の吸引や洗浄を行うとともに、ネブライザー療法を行って治療していきます。また抗菌薬や消炎剤などのお薬も使います。症状が良くなったからといってすぐに通院やお薬をやめてしまうと炎症が慢性化しやすくなりますので、きっちりと治すようにしましょう。
副鼻腔の炎症が慢性化した状態が慢性副鼻腔炎で、いわゆる「ちくのう症」です。症状は「粘液性(時に膿性)の鼻汁」、「鼻閉」、「後鼻漏」が主体で、「頭が重い(頭重感)」や「においがわかりにくい(嗅覚低下)」などの症状も起こすことがあります。炎症が続き副鼻腔の粘膜が浮腫性に腫れて鼻腔へ出てきたものが、「ポリープ」とか「鼻茸(はなたけ)」と呼ばれるものです。急性の場合と同様の鼻の処置やネブライザー療法、消炎剤などのお薬を使って根気よく治療していきます。近年ではマクロライド系という抗生物質を少ない量で長期間(少なくとも数ヶ月)内服する治療法がよく行われます。ただし、ポリープが形成されてしまっているような副鼻腔炎では手術治療が必要となることもあります。気になる症状があるときは、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
アレルギー性鼻炎
アレルギーをひき起こす原因となる物質(アレルゲンといいます)が鼻の粘膜に付着して、そこでアレルギー反応がおこり、「くしゃみ」、「はなみず(水様性鼻汁)」、「鼻づまり(鼻閉)」の3大症状をひき起こす病気がアレルギー性鼻炎です。主として一年中症状がある「通年性」とある時期(季節)だけ症状が出る「季節性」があり、後者の代表的なものが花粉症(別の項で解説)です。空気の乾燥や温度差によって鼻症状がでることもあります。
通年性アレルギー性鼻炎のアレルゲンで頻度が多いのは室内の塵(ハウスダスト)です。この中にはいろいろな物質やカビなども含まれていますが、特に重要なのがダニ類で結局はダニが主要なアレルゲンになっているとされています。この他にはネコやイヌなどのペットの毛もアレルゲンとして知られています。これらの物質にアレルギーのある方は、アレルゲンが鼻に入ると、アレルゲンの侵入を防ぐかのように鼻がつまり、くしゃみや鼻汁でアレルゲンを体の外に追い出そうと反応します。
診療では、まず問診と合わせて鼻鏡検査やアレルゲンを特定するための血液検査などを行います。原因となるアレルゲンがわかれば、アレルゲンを避けたり、除去したりすることが一番の治療になります。また、不規則な生活リズムや、睡眠不足、過労やストレスはアレルギー症状を悪化させることが多く、これらを避けることも症状の軽減に有効です。症状がひどかったり、続いたりする場合には、抗アレルギー剤の飲み薬や点鼻薬(鼻の中に薬を噴霧するもの)を使って症状を和らげるように治療をしていきます。手術治療としてレーザーによる鼻粘膜の焼灼術が行われることもあります。
花粉症
植物の花粉が、鼻やのど、目などの粘膜に接触することによってアレルギー反応がひき起こされ、発作的に「くしゃみ」、「はなみず(水様性鼻汁)」、「鼻づまり(鼻閉)」、「のどや目のかゆみ」などの一連の症状が出るアレルギー性鼻炎です。春先(2~4月)に大量に飛散するスギの花粉が原因であるものが有名ですが、その他にもヒノキ(3~5月)、イネ科のカモガヤ(5~7月)、キク科のブタクサやヨモギ(8~10月)などの花粉もアレルギーの原因となります。
花粉症の治療は、マスク、メガネなどで原因となる花粉に曝されることを避けるようにすることが第一です。 とはいえ、実際には完璧に花粉を避けることはできません。症状がなかなか改善されない方やひどい方では、抗アレルギー薬などのお薬の内服、鼻腔に直接噴霧する点鼻薬、また目の症状に対しては点眼薬を使って治療します。また原因となる花粉がわかっている場合には、その花粉が飛散する少し前から飲み薬や点鼻薬による治療を開始すると花粉飛散期の症状が軽くてすむことが多くなります(初期療法)。最近ではスギ花粉症に対する舌下免疫療法も行われるようになってきました(当院ではまだ施行しておりません)が、治療期間が長くかかるので根気よく続ける必要があります。
鼻出血
鼻出血で最も一般的なのは、鼻の穴を少し入ったところの内側で鼻を左右に分けている仕切壁(鼻中隔といいます)の前端部のキーゼルバッハという部位からの出血です。この部位は血管が豊富で、粘膜が薄くて傷つきやすく、鼻の穴に近いため乾燥しやすく、手指でふれやすいからです。出血があると痂皮(かさぶた)ができて取れるときに再出血することがあるので、一度出血したあとはしばらく繰り返すことがよくあります。鼻をよくさわる癖のある人やよく鼻をかむ人、特にアレルギー性鼻炎で鼻がむずむずするのでつい鼻をしらないうちにさわってしまう子どもさんなどによくみられます。
この部位からの出血の止血法は、まず綿球(なければ化粧用のコットンでよいが、できればティッシュペーパーは使わない)を出血している鼻に入れて外側から鼻を押さえます。上を向いていると血を飲み込んでしまい気分が悪くなりますので、座った姿勢で少しうつむき気味にして、のどに流れてきた血は全て吐き出してください。多くの場合、この状態で5~10分程度で止血できます。 15分以上経っても出血が止まらないときや血が大量にどんどん出てくる場合は、鼻の奥からの出血や動脈からの出血の可能性がありますので早急に耳鼻咽喉科を受診するようにしてください。