唾液腺、くび(頸部)などの主な病気
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
耳下腺は両側の耳の下部付近にある最も大きな唾液腺です。流行性耳下腺炎はムンプスウイルスというウイルスがこの耳下腺に感染することによっておこる病気です。ウイルスが感染してから2~3週間後に発熱とともに耳下腺の腫れと痛みがおこります。予後は良好ですが、合併症として無菌性髄膜炎や一側性の重度の難治性難聴などをおこすことがあります。
治療は基本的に対症療法で、ワクチン接種による予防が最も有効な感染予防対策です。学校感染症に指定されており、耳下腺などの唾液腺の腫れてから5日経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止となります。
唾石症
唾液は両側の耳の下にある耳下腺や下あごの下部に存在する顎下腺などの唾液腺でつくられ、管を通って口の中へ分泌されます。この管の中のどこかで唾液の成分から生じた結晶が塊(唾石)となって次第に大きくなり、管をふさぐようになって症状が出るようになった状態を唾石症といいます。
唾石は唾液腺の中でも顎下腺に最も多く発生します。通常食事をしようとすると唾液が多く分泌されるようになりますが、唾石があると管の途中で唾液がうまく流れないため、もとの唾液腺が腫れて痛みが起こります。顎下腺の場合は食事のときに唾石がある側のあごの下にある腺が腫れます。食事をやめてしばらくすると腫れは治まります。時に自然に排出されることもありますが、多くの場合は手術により管の一部を切って唾石を摘出するか、腺の近くに唾石ができている場合には顎下腺ごと摘出します。
頸部腫瘤
くび(頸部)にはいろいろな原因で腫瘤が発生します。最もよくみられるのは、鼻(鼻・副鼻腔)やのど(咽頭・喉頭)に炎症がおこったときに、対応する頸部のリンパ節にも炎症の反応がおよんで腫れるリンパ節炎です。痛みや熱感を伴うことがよくあります。扁桃炎や風邪で咽喉頭炎をおこしたときにくびのリンパ節が腫れたいう経験ある方も多いと思います。注意しなければならないのは、リンパ節腫大といっても咽喉頭の悪性腫瘍(がん)の頸部のリンパ節への転移のために腫れることがあります。この場合は炎症で腫れる場合よりも硬くて、さわってもあまり動かないことが多く、縮小することなく徐々に大きくなっていきます。逆に痛みはそれほどでもありません。このように頸部のリンパ節が腫れる場合、原因となる病変が鼻やのどにあることが多いので、耳鼻咽喉科的な診察がとても大切になります。
これ以外にも頸部のう胞やいろいろな良性腫瘍、甲状腺というホルモンを産生する内分泌器官の腫大などで頸部に腫瘤がみられることがあります。またリンパ球の腫瘍性病変で全身のリンパ節が腫大する悪性リンパ腫という病気の一症状のこともあります。頸部の腫瘤や腫れに気づいたときには、耳鼻咽喉科で鼻やのどに病気や異常がないかどうか一度は診察を受けることをおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に一時的に呼吸が止まることを繰り返す病気です。睡眠中に繰り返し呼吸が止まると酸素不足となり、身体や脳に負担がかかり断続的に覚醒しているような状態となります。その結果、熟睡できずに昼間に強い眠気や集中力の低下などが起こり、日々の生活に悪影響が出てきます。
昼間の眠気以外の症状としては、睡眠中にときどき呼吸が止まったり、大きないびきをかいたり(特に、いびきが止まって大きな呼吸とともに再びいびきをかきはじめる)、息苦しくて目が覚めるなどがあります。起きている時でも倦怠感や頭痛(頭重感)、口の渇きなどが起こります。
検査としては簡単な装置を自分で装着して睡眠中の血液の酸素飽和度などを測定する在宅でできる簡易検査(簡易ポリソムノグラフィ検査)から入院して睡眠中の脳波などの記録まで行う精密検査まであります。これらの検査で夜間睡眠中にどの程度無呼吸が起こっているのかを計測して、この病気の診断や重症度の評価を行います。
この病気の患者さんは肥満傾向のある方が多いので、まず生活指導として体重の減量、飲酒や喫煙習慣があれば節酒(禁酒)や禁煙が重要です。重症の患者さんに対して有効な治療法として最も一般的に行われているのがCPAP(シーパップ:経鼻的持続陽圧呼吸療法)という治療です。これは睡眠時に鼻にマスクを装着し、装置を使ってエアチューブからこのマスクを通して気道へ空気を送り込んで睡眠中に気道が閉塞しないようにするものです。
睡眠時無呼吸症候群と関連した居眠り運転などによる事故といったニュースもマスコミで取り上げられ、社会的にも注目されている病気です。お心当たりの症状のある方は一度医療機関で相談してみてください。当院では、この病気が疑われる場合は装置を貸し出して簡易検査を行い、重症と診断された場合はCPAP療法の導入を行っています(いずれも健康保険の適応です)。