口・のどの主な病気
口内炎・舌炎
口腔や舌の粘膜のどこにでもおこります。いろいろなタイプの口内炎がありますが、最もよくみられるのがアフタ性口内炎です。アフタは粘膜にできた種々の大きさの境界がはっきりした白い潰瘍病変で、その周囲は発赤しています。症状は会話や飲食のときの接触刺激による強い痛みです。
口内炎を起こす原因としては、ストレスや疲労による免疫力の低下、ビタミンなどの栄養不足、口腔内の粘膜にできた傷からの炎症、口の中の不衛生といった多くの要因があげられています。アフタ性口内炎では、通常1~2週間で自然に治癒することが多いのですが、痛みが強かったり、長びいたりするときはステロイド剤の軟膏を使って治療します。
その他の口内炎としては、ウイルス性口内炎(ヘルペス性歯肉口内炎、手足口病、ヘルパンギーナなど)やカンジダなどの真菌(カビ)による口内炎などがあります。口内炎と思っていても、口腔癌の初発症状やベーチェット病といった全身性の自己免疫疾患の一症状の場合もありますので、長びく場合は一度耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
扁桃炎
扁桃とはのど(咽頭)に存在するリンパ組織の集まりで、大きなものとしては、鼻の奥(鼻腔の後方)の上咽頭という部位にある咽頭扁桃(アデノイド)、口を開けたときにのどの左右にみえる口蓋扁桃、舌のつけ根の部分にある舌根扁桃の3つがあります。このうち口蓋扁桃が一番よく知られており、一般に“へんとうせん”と呼ばれるものです。ここに炎症がおこった状態が扁桃炎で、急性と慢性があります。
口蓋扁桃に細菌やウイルスが感染し急性の炎症をおこしたものが急性扁桃炎で、のどの強い痛みや発熱が主症状です。痛みが強く食事ができなくなることもあります。このときに口蓋扁桃をみると、発赤して腫れた扁桃に白っぽい膿(膿栓)がついていたり、表面全体に白い膜(偽膜)が付着して覆われていたりします。治療としては抗菌薬の内服や点滴が中心になりますが、その他に鎮痛剤や消炎剤、うがい薬などのお薬と診察での局所の消毒やネブライザー療法によって加療していきます。
慢性扁桃炎は口蓋扁桃の細菌感染が慢性化したものです。痛みは少なく、のどの違和感や異物感、体がだるい感じ、微熱が続くなどの症状がみられます。急性扁桃炎をくり返すことも多く、まれに全身の他の臓器の病気(腎炎やリウマチ性疾患など)の原因となります(病巣感染といいます)。慢性扁桃炎では、急性炎症を頻回に繰り返す場合や病巣感染が疑われる場合には手術による扁桃の摘出が一つの主要な治療になります。手術適応については専門的な判断が必要とされますので、耳鼻咽喉科を受診してご相談ください。当院では手術が必要な場合は適切な病院をご紹介いたします。
咽頭炎・喉頭炎
咽頭は上咽頭・中咽頭・下咽頭の3つの部位からなっています。上咽頭は鼻の奥(鼻腔の後方)の部位、中咽頭は口を開けたときに見えるつきあたりののどの壁(咽頭後壁)とその左右に見える“へんとうせん(口蓋扁桃)”を含む部位です。下咽頭はその奥(下方)でだいたい“のどぼとけ”の少し上までのレベルの部位です。喉頭は下咽頭よりもさらに奥に位置しており、そこには発声に関わる声帯(のどぼとけの位置付近に存在する)があります。この咽頭や喉頭に炎症がおこった状態が咽頭炎・喉頭炎で急性と慢性に分けられます。
急性炎症はウイルスや細菌が感染したときにおこります。よくみられるのは、風邪をひいたときにのどが痛くなりますが、この状態が急性の咽頭炎で咽頭の粘膜が赤くなっています。さらに炎症が広がって喉頭にもおこった状態が急性喉頭炎です。症状は咽頭痛や咳、発熱が主体で、炎症が喉頭におよぶと声帯が発赤し腫脹するので声がかすれて発声がしにくくなります。治療は局所処置、ネブライザー療法とともに、消炎鎮痛剤やうがい薬を使います。細菌感染が疑われるときは抗菌薬も加えて治療します。
咽頭や喉頭の炎症が慢性化した状態が慢性咽頭炎・喉頭炎です。痛みは少なく、のどの違和感(つまる感じ、腫れている感じ、異物がある感じ、痰がへばりついた感じ、飲みこむときにつかえる感じなど)が主な症状になります。声帯が慢性的に炎症をおこすと、普段から声がかれた状態となります。治療は主としてネブライザー療法や消炎剤の内服で行いますが、喫煙や大声の発声、過度な咳ばらいなどの習慣や癖は炎症の原因となりますので止めるように努力していただくことも大切です。治療は長期間におよぶことが多いので根気よく治療を続けてください。
急性喉頭蓋炎
咽頭と喉頭の間の位置にある葉っぱのような形をした蓋状の突起を喉頭蓋といいます。ここに細菌が感染し急性の炎症がおこった状態が急性喉頭蓋炎です。咽頭痛と発熱が主症状で、唾液も飲みこめないほどの激しい痛みになることもあります。炎症がひどい場合には、喉頭蓋が腫れて呼吸の空気の通り道をふさいでしまい窒息にいたる危険性があるので、緊急に濃厚な治療や処置が必要とされる耳鼻咽喉科の救急疾患の一つです。診断には耳鼻咽喉科専門医による診察が必要不可欠です。治療は抗菌薬の点滴を強力に行います。それと同時に腫れを軽減させるためにステロイド剤を使うこともあります。原則として厳重な呼吸管理ができる医療機関での入院治療が必要になります。急性喉頭蓋炎と診断した際には、患者さんとご相談したうえで最適な医療機関へ紹介させていただきます。
咽頭がん、喉頭がん
咽頭は上・中・下咽頭の3つの部位からなっています。上咽頭は鼻の奥(鼻腔の後方)の部位、中咽頭は口を開けたときに見えるつきあたりの壁(咽頭後壁)とその左右に見える“へんとうせん(口蓋扁桃)”を含む部位です。下咽頭はその奥(下方)でだいたい“のどぼとけ”の少し上までのレベルの部位です。喉頭は下咽頭よりもさらに奥に位置しており、そこには発声に関わる声帯(のどぼとけのレベル付近に存在する)があります。
喉頭がんでは比較的早い時期に声がれなどの症状がでますが、放置していると、声がどんどん出しにくくなり、痰や唾液に血が混ざったり、呼吸も苦しくなったりしていきます。咽頭がんは喉頭がんに比べてはっきりとした症状が出にくいことが多く、のどの違和感や食べ物を飲みこむときのひっかかり感などで発症して、徐々に悪化していきます。転移をおこしてくび(頸部)のリンパ節が腫れて発見されることもあります。治療は放射線治療、抗がん剤による化学療法、手術の3つを単独あるいは組み合わせて行っていくことになります。どちらのがんも早期発見が非常に大切です。
当院では電子スコープを用いて咽喉頭を詳細かつ慎重に観察することにより、常にがんの早期発見ということを念頭においた診療を心掛けております。のどに異常を感じた際は遠慮せずに気軽に受診してください。がんが強く疑われる病変が見つかった場合には、診断や治療設備の整った大学病院などの医療機関へ紹介いたします。